就業規則と労働基準法の上下関係

以前働いていた会社は、日本を代表する大手企業の子会社で、親会社からの出向者が勤務していました。

自分の上司である取締役兼部長も、もちろん出向者でした。

自分の上司は、出向元の本社で部長までやられた方なので、それなりに真面目で優秀な方でしたが、元公務員の再雇用を担当したことはあったけど、会社の総務部門は全くの門外漢でした。

そういう方は、自分の会社はどうだったか、過去に自分が似たようなことを経験したときどのように対処したかを元に判断されていましたが、それゆえに狭い世界での経験しかなく、残念ながらグローバルな判断ができない方でした。

 

就業規則に関する問題点

中小企業でしたが、大手企業の資本が入りしっかりしていた会社でしたが、総務部経験者がいないという致命的な問題があり、その最たる例が就業規則でした。

就業規則を労基署に未提出

一応、親会社のものを参考にして立派な就業規則は作ってありましたが、就業規則を労働基準監督署に提出していないという、まさに、仏作って魂れず状態でした。

総務部の担当者として何度なく労基署への就業規則の提出を進言しましたが、重要性をわかってくれないのか、一向に取り合ってくれません。

しかし、ある日を境に、急に就業規則を提出しなきゃいけないと、総務部長が言い始めました。

親会社から、労働基準法遵守について社長に連絡があったらしく、社長から指示があったようなのです。

社長からは「なんで就業規則を労基署に提出してないんだ」みたいなことを言われる羽目になったのでした。

上司の遵法精神が高まったわけではないことがちょっと不満が残りましたが、やらなければいけないことが正常化されるのはいいことです。

就業規則は法律を上回る?

で、くだんの上司と、会社の就業条件のことについて話ししていた時のことです。

その上司曰く「当会社の就業規則に規定する雇用条件は、取締役会で承認されているから、労働基準法を下回っていても構わない。」という見解を言われて愕然とした覚えがあります。

彼が「守らなくていい」と言った雇用条件の詳細は、残念ながら失念してしまいましたが、はっきり覚えているのが、就業規則で規定する労働条件が労働基準法の条件を下回っていたから改善しなければならない、という話をしていた時に上司からの発言だったということです。

上司曰く、労働基準法以下の条件だとしても、当社の就業規則は取締役会で社内ルールとして承認されている。

組織のトップが認めた規則は、法律より優先されるはずとの考え方だったようです。

もちろん実際には、就業規則より労働基準法の方が上位「規則」ですから、労働基準法以下の内容が就業規則に定められていてもその内容は無効です。

 

組織の定めのみが通用するという陥りがちな問題点

似たような話は枚挙にいとまがありません。

社内で社員の就業条件の話をしていても、法律上の要件に関係なく効率化を図ろうとする話ばかりで、法律上その要件は認められない旨を説明しても、多くの場合は、法律上の要件より赤字を出さないためには法律の要件など厭わないという感じでした。

もちろん、法律を自分たちの仕事がうまくいくように解釈することは重要なことですが、基本的な部分を理解した上で議論をしないと、話が全く進まないことがあります。

憲法→法律→会社の規則という順位を理解しよう

多くの組織では、法律の要件が変更になったにも関わらず組織内のルールを変更せず、そのルールを絶対的なものとして運用してしまいます。

大きな問題が発生していないときはいいのですが、雇用条件の話の時は、突然問題が発生して、会社が不利になることが多いので注意が必要です。

まずは、憲法→法律→会社の規則という規則の順位をきちんと理解すること、現場は規則を気にすることなく手順だけで運用できるような文書体系にする必要があります。

 

規則の階層の整合性をきちんとしよう

規則の階層を理解して、そして、各階層毎の規則の決裁権限者をきちんと決めて会社の業務の実態に即した規則を制定すれば、驚くほど会社はうまく回るようになります。

そして、下位の文書を上位の規則を反映して作成するれば、文書の作成も簡単になり現場の意見を反映させやすくなるでしょう。

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